AI活用 実践ワークで業務を変える|考える力を引き出す設計法

AI活用が企業の業務効率化に不可欠な時代となった。しかし、ChatGPTやMicrosoft Copilotを導入しても、現場で定着しない企業は多い。その理由は、道具の使い方を教えるだけでは不十分だからである。AIを業務に落とし込むには、考える力を引き出す実践の場が必要である。

本稿では、生成AIを実務で使いこなすための実践設計と、業務変革を促す問いの立て方について、法人研修の現場で得た知見をもとに解説する。単なる操作講座ではなく、業務の再設計を促す取り組みこそが、AI活用の本質である。

AIは特別なものではなく、道具箱のひとつである。ただし、その使い方を知っている人と知らない人では、仕事の速さも質も変わる。実践を通して、考える時間を取り戻すための具体的なステップを示していく。


AI活用が定着しない理由

多くの企業がChatGPTやCopilotを導入している。しかし、現場での活用が進まない理由は明確である。それは、道具の操作方法だけを教えても、業務への適用の姿が見えないからである。

沖縄県庁では、生成AIサービス「exaBase 生成AI for 自治体」の導入に伴い、職員向けの実践研修を開催した。研修では「AIを知る」から「使いこなす」への段階を重視し、講義だけでなく具体的な業務を想定した実践に時間を割いた。

研修後の調査では、93%が「満足」または「大変満足」と回答し、同じく93%が「業務に活かせる」と答えている。この結果が示すのは、実践形式の研修が現場の定着を促す鍵であるということだ。

職員が実際の業務課題をもとにAIとの対話を試す研修風景

AI道具は、導入するだけでは効果を発揮しない。現場の担当者が自分の業務にどう組み込めるかを考え、試行錯誤する時間が必要である。そのためには、実践を通じて「考える力」を引き出す設計が求められる。

出典

株式会社エクサウィザーズ「沖縄県庁が『exaBase 生成AI for 自治体』を導入」

より作成


実践設計の原則

AI活用の実践には、明確な設計原則がある。それは、業務の洗い出しから始め、指示文の設計を経て、実際の成果物を生成するまでの一連の流れを体験させることである。

業務の洗い出しと構造化

最初の段階は、日々の業務内容を書き出し、作業を構造的に分解することである。沖縄県庁の研修では、参加者が「面倒な作業をAIに任せられないか」という視点で業務の棚卸しを行った。

具体的には、講座報告書の一次点検、繰り返しになりがちな広報案の発想、音声記録からの入力項目抽出など、実際の業務課題が挙がった。この過程を通じて、AIが担える領域と人間が判断すべき領域が明確になる。

業務の洗い出しは、単なる一覧づくりではない。作業の構造を理解し、どこにAIを組み込めるかを考える思考訓練である。この段階で、業務の本質を見つめ直すことができる。

指示文設計の実践

次の段階は、AIに対する指示文の設計である。沖縄県庁の研修では、「条件を細かく指定すること」「AIに役割を与えること」など、回答精度を高める指示文の工夫を実践した。

参加者が指示文を書き換えながらAIの回答の変化を確認する様子

参加者からは「AIに役割を与えるだけで回答が専門的になった」「意のままに動かす手応えを掴めた」といった声が上がった。指示文設計は、AIとの対話を通じて、自分の思考を整理する行為でもある。

指示文設計の本質は、曖昧な指示を具体的な言葉に変換することである。この過程で、自分が何を求めているのかが明確になる。AIは、人間の思考を映し出す鏡のような存在である。

実践の構成要素

実践は、講義と演習を組み合わせた90分程度の構成が効果的である。沖縄県庁の研修では、講義で他自治体の事例を紹介し、その後2つの演習を実施した。

1つ目の演習では業務の洗い出しを行い、2つ目の演習では指示文設計を実践した。この構成により、参加者は「知る」から「できる」へと段階的に力を習得できる。

実践設計で重要なのは、参加者が自分の業務を題材に成果物を作ることである。一般的な事例だけでは、現場への適用の姿が見えない。自社の課題を扱うことで、研修終了後も継続的な推進力が生まれる。


考える力を引き出す問いの立て方

AI活用の実践で最も重要なのは、適切な問いを立てることである。問いの質が、AIから引き出せる価値を決める。ここでは、業務変革を促す問いの立て方について解説する。

目的意識を明確にする

問いを立てる前に、何のためにAIを使うのかを明確にする必要がある。業務時間の削減なのか、発想の質の向上なのか、それとも新しい視点の獲得なのか。目的が曖昧なままでは、AIも適切な回答を返せない。

熊本市が開催した「AI活用×業務改革実践セミナー」では、体験型の演習を通じて普段の業務を書き出し、AI活用や外部委託が可能な業務を分類する取り組みを行った。この過程で、参加者は自分の業務の目的を再確認することになる。

業務の目的を整理しながらAI活用の可能性を探る参加者たち

目的意識の強さが、「なぜ」を生む。常に原因と結果の関係で捉えることで、業務の本質が見えてくる。AIは、その本質を掘り下げるための対話相手である。

出典

熊本市「今すぐ始めるAI活用×業務改革実践セミナー」

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視点を変えて考える

問いの立て方を変えることで、AIから得られる回答の幅が広がる。いつもの自分と違う見方をすることが、新しい発想を生む。視点を変える方法には、立場を変える、時間軸を変える、抽象度を変えるなどがある。

例えば、「この資料をわかりやすくするには?」という問いを、「この資料を初めて見る人は何を知りたいか?」と変えるだけで、AIの回答は大きく変わる。視点の転換は、思考の幅を広げる訓練である。

話し合いで気づきを呼び込むことも有効である。複数人で問いを立て合うことで、自分では気づかなかった視点が見えてくる。AIは個人の思考を拡張するが、人との対話はさらにその可能性を広げる。

仮説を構築する思考習慣

問いを立てる際には、仮説を持つことが重要である。仮説とは、「おそらくこうだろう」という当たりをつけることである。仮説があることで、AIとの対話が効率的になる。

仮説構築には、帰納的思考や流れを読む思考が役立つ。過去の経験から経験則を導き出し、それを未来に適用する。AIは、その仮説を検証するための情報を提供してくれる。

仮説思考は試行錯誤の繰り返しである。最初から完璧な問いを立てる必要はない。AIとの対話を通じて、問いを磨いていく過程こそが、考える力を引き出す鍵である。


業務変革を促す実践の実例

実践の効果を最大化するには、具体的な業務課題を扱うことが不可欠である。ここでは、実際の研修で行われた実践の実例を紹介する。

文書作成業務の効率化

議事録作成や報告書作成は、多くの企業で時間を要する業務である。生成AIを活用することで、この作業時間を大幅に削減できる。埼玉県庁や兵庫県庁では、議事録作成の時間が5〜6時間から1時間に短縮された事例がある。

会議記録をもとにAIが議事録の下書きを作成する実践演習

実践では、実際の会議の音声記録や議事メモをもとに、AIに議事録の下書きを作成させる演習を行う。参加者は、指示の指定方法によって出力の質が変わることを体感する。

文書作成業務の効率化は、単なる時間短縮ではない。AIが下書きを作成することで、人間は内容の精査や追加情報の検討に時間を使える。これは、業務の質を高めることにつながる。

出典

株式会社エクサウィザーズ「沖縄県庁が『exaBase 生成AI for 自治体』を導入」

より作成

発想創出と意見出し

繰り返しになりがちな業務に新しい視点を持ち込むために、AIを活用した発想創出の演習も効果的である。広報案の作成や新規企画の立案など、創造性が求められる業務でAIは力を発揮する。

実践では、参加者が抱える実際の課題をテーマに、AIとの意見出しを行う。AIに複数の視点から発想を出させ、それをもとに議論を深める。この過程で、参加者は自分では思いつかなかった発想に出会う。

発想創出におけるAIの役割は、発想の起点を提供することである。最終的な判断は人間が行うが、AIが提示する選択肢の幅が広いほど、質の高い成果物が生まれる。

情報分析と情報整理

大量の情報を整理し、必要な情報を抽出する業務も、AIが得意とする領域である。音声記録からの入力項目抽出や、複数の資料からの要点まとめなど、情報処理業務の効率化が期待できる。

実践では、実際の業務で扱う情報をもとに、AIに情報整理を依頼する演習を行う。参加者は、どのような指示を出せば求める形式で情報が整理されるかを学ぶ。

情報分析業務におけるAIの活用は、人間の判断を補助するものである。AIが提示した情報をもとに、人間が最終的な解釈と意思決定を行う。この役割分担が、業務の質と速度を両立させる。


研修設計の実践視点

AI活用の実践を企業研修に組み込む際には、いくつかの重要な視点がある。ここでは、研修設計の実践的な考え方を示す。

その場での指導の重要性

録画教材ではなく、講師が直接指導するその場での研修が効果的である。参加者の反応を見ながら、その場で疑問に答え、議論を深めることができるからである。

講師が参加者の質問に答えながら進めるその場での研修風景

株式会社グレイトフルエージェントが提供する生成AI研修サービスは、オンライン(Zoom)でのその場での配信形式を採用している。全5回構成(各2.5時間、合計12.5時間)で、週1回のペースで実施される。

その場での研修の利点は、参加者同士の交流と意見交換が生まれることである。他の参加者の活用事例を聞くことで、自分の業務への適用の姿が具体化する。この相互作用が、研修の効果を高める。

段階的な学びの設計

AI活用の力は、一度の研修で身につくものではない。基礎から応用へと段階的に学ぶ構成が必要である。グレイトフルエージェントの研修では、以下のような構成が採用されている。

基礎:指示文設計とAIの基本理解
応用:自社業務への活用領域の発見
共通業務効率化:文書作成・報告書・議事録・やりとり対応
専門業務効率化①:営業・人事・総務など職種別活用
専門業務効率化②:現場課題をテーマにした実践

この段階的な構成により、参加者は無理なく力を習得できる。各回で学んだ内容を次回までに実務で試すことで、知識が定着する。

業務に寄り添う構成

研修の内容は、参加者の実際の職種や部署に合わせて調整することが重要である。一般的な事例だけでは、現場への適用が難しい。

グレイトフルエージェントの研修では、実際の職種・部署単位で事例を選択可能な設計となっている。受講中に自社業務を題材に成果物を作ることで、研修終了後すぐに実務で活用できる状態を目指す。

業務に寄り添う構成は、参加者の意欲を高める。自分の業務が楽になるという実感が、継続的な学習意欲につながる。


AI活用の効果測定と継続支援

実践を通じてAI活用の力を習得した後、その効果を測定し、継続的に支援する仕組みが必要である。ここでは、効果測定の方法と継続支援の在り方について述べる。

数値による効果測定

AI活用の効果は、業務時間の削減や業務の質の向上として現れる。グレイトフルエージェントの研修では、導入効果として以下の実績が示されている。

業務時間の約30〜35%削減(情報収集・資料作成・やりとり対応)、受講者の71%が「業務の質が向上した」と回答、1人あたり年間52.8万円の効率化効果を試算、という実績である。

数値による効果測定は、AI活用の価値を経営層に示すために重要である。数値で示すことで、研修への投資対効果が明確になる。

出典

ディジタルグロースアカデミア「生成AI実践ワークショップ」

より作成

質による効果測定

数値だけでは測れない効果もある。業務への取り組み姿勢の変化や、新しい発想の創出など、質による効果も重要である。

沖縄県庁の研修では、参加者の93%が「業務に活かせる」と回答した。この高い満足度は、研修が参加者の意識変革につながったことを示している。

質による効果は、調査や聞き取りを通じて把握する。参加者の声を集めることで、研修内容の改善点も見えてくる。

継続的な学習支援

研修終了後も、継続的な学習支援が必要である。AIの技術は日々進化しており、新しい活用方法が次々と生まれている。定期的な情報提供や、追加研修の実施が効果的である。

また、社内でAI活用の事例を共有する場を設けることも重要である。成功事例を共有することで、他の社員の学習意欲が高まる。組織全体でAI活用の文化を育むことが、長期的な効果につながる。


AI活用における課題と対策

AI活用を推進する上で、いくつかの課題が存在する。ここでは、よくある課題とその対策について述べる。

安全性と規則の遵守

企業でAIを活用する際、最も懸念されるのが安全性と規則の遵守の問題である。機密情報の漏洩や、不適切な情報の生成などの危険性がある。

対策としては、自治体向けの専用ネットワーク環境「LGWAN」に対応したサービスの利用や、会話内容を学習情報として利用しない設定、禁止語句登録、機密情報遮断機能などが有効である。

安全性対策は、AI活用の前提条件である。安全な環境を整えることで、社員は安心してAIを活用できる。

現場への定着の難しさ

AI道具を導入しても、現場で使われなければ意味がない。定着しない理由は、使い方がわからない、業務への適用の姿が見えない、効果が実感できない、などである。

対策としては、実践形式の研修を実施し、参加者が自分の業務でAIを試す機会を提供することである。また、成功事例を社内で共有し、効果を見える化することも重要である。

現場への定着は、時間をかけて取り組むべき課題である。一度の研修で終わらせず、継続的な支援を行うことが必要である。

力の差

社員の情報技術への理解やAIへの理解度には差がある。一律の研修では、一部の社員がついていけなかったり、逆に物足りなく感じたりする可能性がある。

対策としては、力の段階別の研修を用意することである。初心者向けの基礎研修と、経験者向けの応用研修を分けることで、それぞれの段階に合った学習が可能になる。

力の差は、組織の成長段階によって変化する。定期的に力の調査を行い、研修内容を見直すことが重要である。


まとめ

AI活用の実践は、単なる操作講座ではない。業務の再設計を促し、考える力を引き出すための取り組みである。道具の使い方を教えるだけでは、現場への定着は難しい。

実践設計の原則は、業務の洗い出し、指示文設計、実際の成果物生成という一連の流れを体験させることである。この過程で、参加者は自分の業務にAIをどう組み込めるかを考える。

問いの立て方が、AIから引き出せる価値を決める。目的意識を明確にし、視点を変え、仮説を持つことで、AIとの対話が効率的になる。実践を通じて、この思考習慣を身につけることが重要である。

研修設計では、その場での研修、段階的な学びの構成、業務に寄り添う構成が効果的である。研修終了後も、継続的な学習支援と効果測定を行うことで、組織全体でAI活用の文化を育むことができる。

AI活用は、業務効率化だけでなく、考える時間を取り戻すための手段である。AIが担える作業を任せることで、人間は本質的な思考や判断に集中できる。これが、AI活用の真の価値である。

生成AI研修サービスに関心をお持ちの方は、株式会社グレイトフルエージェントまでお問い合わせいただきたい。ChatGPT、Microsoft Copilot、Google Geminiに対応した実践的な研修を提供している。人材開発支援助成金の対象となり、75%の還元が可能である。

AI活用の第一歩として、自社に合った研修を選ぶことから始めてみてはいかがだろうか。

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